高峰譲吉とアドレナリンはいつ歴史を変えたか

「アドレナリンって、いつ誰が発見したんだろう？」
そう思ったことはありませんか？スポーツや緊張時に話題になるホルモン「アドレナリン」。この物質を世界で初めて抽出し、薬として活用できるようにしたのが、日本人科学者・高峰譲吉です。

実はその発見は、今から120年以上も前の明治時代にさかのぼります。しかも、その功績は日本国内にとどまらず、世界中の医学や薬学の発展に大きな影響を与えました。

この記事では、「高峰譲吉 アドレナリン いつ？」という疑問にしっかり答えながら、彼がなぜ“歴史を変えた”人物と呼ばれているのかを、わかりやすくご紹介します。

知っておきたい科学と偉人のストーリー、ここから始めましょう。

高峰譲吉とは？どんな人物だったのか

「アドレナリンを発見した科学者」として知られる高峰譲吉ですが、実はそれだけでは語りきれないほど多彩な功績を残した人物です。

明治時代の日本から世界へ飛び出し、化学の力で人々の暮らしを変えた先駆者。その足跡をたどることで、彼の偉大さがより一層見えてきます。

日本人初の世界的化学者

高峰譲吉は、1854年（安政元年）に加賀国（現在の石川県）で生まれました。明治維新の直前という激動の時代に生を受けた彼は、幼い頃から学問に秀で、特に理化学への興味を深めていきます。

その後、東京医学校（現在の東京大学医学部）で学び、さらにアメリカに留学。農芸化学や薬学を本格的に学びながら、グローバルな視野を身につけていきました。

帰国後は日本政府の要職にも就きますが、再び渡米し、ニューヨークに研究拠点を置くようになります。

実は、アドレナリンの発見よりも前に、世界で初めて消化酵素を抽出した「タカジアスターゼ」の開発でも世界から注目を集めていました。

この酵素は、消化薬やビール醸造の分野でも活用され、日本の科学技術が初めて“輸出産業”として評価された例でもあります。

世界に名を残すきっかけとは

高峰譲吉が世界の科学史に名を刻むことになった大きな転機は、アメリカでの研究活動にありました。

彼は、単に物質を発見・抽出するだけでなく、「それをどう人の役に立てるか」を強く意識していた科学者でした。

その姿勢が特に表れたのが、医薬品の研究です。日々研究室にこもり、地道な分析と実験を繰り返すなか、彼は“生体からホルモンを抽出する”という当時としては革新的なアプローチを採用しました。

「科学は人のためにある」。
そんな信念を胸に、高峰は自らの研究成果を社会に還元する道を模索していきます。そしてその延長線上にあったのが、のちに彼の代名詞となる「アドレナリンの発見」でした。

高峰譲吉は、単なる“発見者”ではなく、未来の医療や人々の生活を見据えたビジョナリーな科学者だったのです。

アドレナリンはいつ、どうやって発見された？

「アドレナリンって、いつ発見されたの？」という疑問に対して、明確な答えがあります。
それは、1901年（明治34年）のこと。

この年、日本人科学者・高峰譲吉とその助手・上中啓三によって、アドレナリンの抽出が世界で初めて成功しました。この発見は、医学と薬学の歴史を塗り替えるほどのインパクトを持っていました。

1901年、アドレナリン抽出に成功

高峰譲吉がアメリカに渡って研究に取り組んでいたころ、医学の現場では「体内で働く物質」がどのように作用しているか、まだほとんど解明されていませんでした。

とくに副腎という器官が分泌する成分については、「なにか重要な働きがあるらしい」という程度の理解しかなかったのです。

そんな中、高峰は助手の上中啓三と共に、ウシの副腎から有効成分を取り出す研究を始めます。試行錯誤の末、1901年、ついにその成分を単離することに成功。

それが、のちに「アドレナリン」と名づけられる物質でした。

明治34年といえば、日本ではまだ医学も西洋の知識を吸収している最中でした。そんな時代に、しかもアメリカの地で、日本人が世界初の成果を成し遂げたことは、国内外に大きな驚きを与えました。

ちなみに、「アドレナリン」という名称は、高峰が提案した「Adrenalin」に由来します。これは副腎（adrenal gland）から得られた物質であることにちなんでいます。

医学と薬学の常識を変えた発見

この発見がなぜ歴史を変えたのか――
それは、アドレナリンが「世界で初めて抽出に成功したホルモン」であり、内分泌物質の研究を飛躍的に進めるきっかけになったからです。

当時の医学界では、「体内で起こる化学反応」を証明すること自体が難しい時代でした。そんな中で、高峰たちは“目に見えない働きをする物質”を、科学的に証明し、抽出・精製まで実現したのです。

さらに、アドレナリンはただの発見で終わりませんでした。強心剤や止血剤、アナフィラキシーショックへの治療薬として、すぐに医療現場で活用され始めたのです。
この実用性の高さも、発見の価値をさらに高めました。

高峰のアドレナリン発見は、「薬としてのホルモン」という考え方を生み、のちのインスリンやステロイドホルモンなど、現代の内分泌治療の礎になったとも言えます。

なぜ“歴史を変えた”と言えるのか

「アドレナリンの発見が歴史を変えた」と言われるのは、単なる科学的な功績にとどまらず、その後の医療の進化や国際的な科学の流れにまで大きな影響を与えたからです。

高峰譲吉が成し遂げたことは、発見という一時的な成果ではなく、「未来の医療のあり方」を根本から変える力を持っていました。

救命医療・循環器治療への応用

アドレナリンは、今日の医療現場で欠かせない薬のひとつとして使われています。とくに有名なのは、心停止時の蘇生処置（いわゆるAEDと併用）や、アナフィラキシーショックへの緊急対応です。

例えば、重度のアレルギー反応で血圧が急激に低下した場合、アドレナリンの注射が命を救うケースも珍しくありません。

救急車内や病院の緊急外来では、最初に使われる薬剤のひとつとして、今も世界中で活躍しています。

また、心臓の収縮力を一時的に高める作用があるため、心臓マッサージやショック治療との組み合わせで使用されることも多いです。

このように、「命をつなぐ薬」として100年以上も第一線で使われ続けている事実こそが、高峰譲吉の功績の“生きた証”と言えるでしょう。

薬学の研究成果が、ここまで長く現場で生き続ける例は非常に稀です。まさに医学と薬学の常識を塗り替え、患者の命を救い続けている――それがアドレナリンの価値なのです。

国際的な評価と科学者としての地位

高峰譲吉の業績は、国内だけでなく海外でも高く評価されていました。

特に、アドレナリンの発見によって、ノーベル賞の候補者として正式にノミネートされた事実は、彼の研究がどれほど画期的であったかを物語っています。

最終的に受賞には至らなかったものの、当時のノーベル委員会において、彼の業績は「近代生理学における重大な貢献」として議論されました。

さらに、アメリカの薬学会などからも数々の表彰を受けており、高峰の名は医薬品の歴史を語る上で欠かせない存在となっています。

日本から世界へ。科学者としての高峰譲吉は、当時としては非常に珍しい“国際的偉人”だったのです。

彼の挑戦は、のちに多くの日本人科学者が世界に羽ばたく道を切り開くことにもつながりました。「研究は国境を越える」――その言葉を体現した人物こそが、高峰譲吉だったのです。

【まとめ】高峰譲吉が今も語り継がれる理由

「高峰譲吉 アドレナリン いつ発見されたのか？」という疑問を入り口に、その偉業をたどってきましたが、彼が今も多くの人々に語り継がれる理由は、単なる科学的成果を超えたところにあります。

高峰譲吉は、常に“人の役に立つ科学”を追い求めました。
異国の地・アメリカで研究を重ね、明治時代の日本から世界に向けて、新たな可能性を切り拓いたその姿勢には、揺るぎない探究心と使命感が感じられます。

彼が発見したアドレナリンは、今日も救急医療や循環器治療に使われており、100年以上たった今でも人々の命を守り続けています。
この事実ひとつとっても、彼の功績が“歴史を変えた”と呼ばれるにふさわしい理由があるとわかります。

「高峰譲吉 アドレナリン いつ」という問いの先には、「なぜ今も世界に必要とされているのか」というもっと大きなストーリーがあります。
その答えは、時代や国境を越えて、未来の私たちにも届くメッセージとして生き続けています。

Q&A｜高峰譲吉とアドレナリンに関するよくある質問